「誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル社会」を実現します。

 わが国のコロナ対応の不備は〝デジタル敗戦〟と指摘されています。各地の保健所が中心に行っていた感染者の把握や集計が当初は紙と鉛筆とFAXによる方法であり、感染状況の把握に相当な時間がかかりました。10万円の特別定額給付金も(自治体職員と銀行員等の頑張りによりリーマン・ショック時の同様の措置に比べ3分の1の期間で実施されましたが)デジタル化を通じて更なる短縮も可能であったと考えています。
 他方、台湾ではオードリー・タンIT大臣の下でデジタル技術を駆使したコロナ対応を実施しています。例えば、マスクが不足した際にはどのショップにマスクの在庫があるか可視化するとともに、台湾版マイナンバーカードで個人の販売数の上限を決めて買い占めを防ぐことに成功しました。
 わが国も特別定額給付金のオンライン申請や接触確認アプリCOCOAをはじめとするデジタル対応に臨みましたが、不具合が生じ、行政のノウハウ・人材不足が露呈しました。
 こうした〝デジタル敗戦〟から再起する取り組みが現在のデジタル政策です。実際に、菅政権の誕生以降、個人情報保護ルールの統一や、自治体情報システムの標準化などのデジタル政策が加速度的に前進しました。今年9月に設立されるデジタル庁は民間人材を大量採用し組織も柔軟かつフラットにすることで、デジタル政策に最適な能力やノウハウを蓄積していきます。その中で、私は自民党デジタル社会推進本部マイナンバー小委員会の座長としてマイナンバー・マイナンバーカードの利活用促進(当然に個人情報保護やセキュリティには万全を期した上でですが)に取り組みました。

マイナンバーカードは〝デジタル社会のパスポート〟と呼ばれています。「最終的に、誰でも自宅に居ながら、スマートフォンで引越し手続きはじめ全ての行政手続が60秒以内に完結する、圧倒的に便利でデジタルを意識しないデジタル社会」を目指し行政のデジタル化を進めていますが、対面の代わりにオンラインで行政等の手続きを実施した場合、デジタル上で本人確認する必要があります。その際に最も信頼できるツールがマイナンバーカードです。そのマイナンバーカードも様々な振興策を通じて取得率がこの2年間で13.5→30.0%(2021年5月1日現在)となりました。
 また、コロナ対応の教訓を踏まえて今国会に提出され成立したデジタル関連法によって、給付作業における①マイナンバーによる管理、②課税情報の確認が可能となりました。この仕組みを通じたひとり親・ふたり親家庭への子育て給付金は、①で自治体側の消し込み作業が省力化され②で申請不要の実質プッシュ型支援になり、受給者と行政双方に大きなメリットが生まれることになりました。こうした取り組みを積み重ね〝デジタル敗戦〟を立て直していきたいと思います。
 同時に、デジタル・デバイド対策も必要です。デジタル大国デンマークを見習い、スマホを十分に使えない、そもそも保有していない方でも身近な場所で丁寧に教えてもらえる環境整備を総務省とともに進めています。中国のように中央監視社会を作るのではなく米国のように自己責任社会にするのではなく「誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル社会」を実現します。
注)デジタル・デバイド・・・インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のこと。